
ロマン・ロランは私を支えてくれる作家であり、一人誰かを選ぶかと問われたら迷わずロマン・ロランを選びます。 高校の時に読み始めてから、人生の節目に呼んできたのは「魅せられたる魂」です。 学生、子育てのなか、子供が幼児の時、子供が中学生となり色々問題を抱えたとき、仕事の悩みを抱えたとき、などです。 今は全集を折に触れ少しずつ、ページを開いています。
生後まもなくから病弱となり、妹の死を経て孤独な少年時代を過ごし、病気と闘いながら膨大な著作を残しています。 小説、戯曲、随筆、日記、手紙など一体一日何時間文を書いていたのだろうと不思議に思うくらいです。 母親への手紙はほとんど毎日、その間に電報も送っています。
そして第一次世界大戦の間の日記も全集4冊文にもなり、東欧の虐殺、イスラエルの独立問題にも触れており、 今の情勢と変わらぬことに驚かされます。イスラエルに関しても独立に反対しており、 もしイスラエルが今の場所に建国していなければと思ったりもします。
気管支、結核、心臓、骨折と病気と闘いながらも、精神の健康さを持ち続けたロマン・ロラン。 自殺した日本の作家との対比を考えながらロマン・ロランを紹介してゆきたいとおもいます。 リンク先にロマン・ロランに関するホームページを載せていますのでそちらもご覧になってください。
苦悩を突き抜けて歓喜へ・・・「ジャン・クリストフ」より
ジャン・クリストフの翻訳をされた片山敏彦さんの詩を載せておきます。これは、明らかにロマン・ロランのことを書いています。
精神の堂を築く人々 ― 片山 敏彦
地上の歴史を縦につらぬいて 精神の堂を築く人格たちがある。 創造と自由と愛とにもとづいて 彼らは血なまぐさい争ひの歴史の中で かりそめの力よりも永く生きる精神の堂を 日々の使命として生き 瞬時をいくつしんで永遠を信じ 人間の苦しみと喜びの底に 聖なる音楽を聴き 仕事を、この音楽への応答として生きる。 彼らは成功に対して微笑し 現実の危険には小心翼々と人々のために心配し 人々が悩むことに平気でゐることができないが、しかし 彼らは部分的な勝利を信用せず 全体的な真実の実現のために苦労し、献身し 彼らは、一つの主義主張が 対極のものへ転化変質することのあるのを知ってゐるので 生きる意義に関することがらについては 合理を重んじながら象徴に頼り 概念の体系を深めながら 経験が生む神話の原型(アルケチーブ)に注目し、 信仰を自己の内面にもつが この自己は外的必然の機械的部分品にはなりきらず 自己超克を課題とする自己であり 恩寵とは 自己超克の螺旋のかたちの途上で与へられる ユニテの恍惚である。
